2012年3月21日水曜日

Coding the Next Chapter of American History #SXSW

SXSW の基調講演の一つ、Code For America を作った Jennifer Pahlka さんの "Coding the Next Chapter of American History"が面白かったのでメモを共有。彼女の講演は以前も見たことがあるけど、格段に上手くなった気がする :)

SXSW

なお、全編を聞きたい方は、podcastがこちらで聞けます動画は公開されていないので、 TED での講演動画を入れておきます。半分ぐらいは同じ話。

Jennifer Pahlka: Coding a better government



Jenniferは、地方自治体の Gov2.0 を推し進める Code for America を作った人。

Government2.0 の重要性について説明するにあたり、すごい古臭くて使いづらそうなスクリーンショットを見せる。「80年代に作ったサイトみたいに見えるでしょ、IEでしか動かなくて、ドロップダウンメニューがあるのに何もメニューが入ってない。そう見えるのも当たり前で、これらが作られたのは80年代なの。こんなシステムがまだ政府だと稼動していたりする。直さなきゃ。」(日本の政府機関も耳が痛い?)

「だけど、こういう古臭いシステムを直せるような、スマートでクリエイティブな人って、政府の中にはいないのよ。だから、こういうのを直せるような人たちは、政府のシステムがこんなにひどいことも知らないし、こういう問題が存在すること自体、見たことも聞いたこともないので知らないし、このひどいシステムにどれだけメンテのお金がかかっているかなんてことも知らないわけ。よく、"政府はシステムにかけるお金がない"なんて言うでしょう。政府のIT投資は、1720億ドルよ。全然小さくない。ゲーム市場が100億ドルでしょう。その10倍ものお金が、使われているわけ。それは、ここにいるような開発者の皆さんにとっては、市場でもあると言っていいでしょう。」(日本だと大手システムSIerさんとかがそこの市場をパクパクしているんですよね)

今までだったら、保守的な政府の人たちはそこに開発者を入れて直したいなんて思っていなかった。だけど。「今の連邦 CTO と CIOは違う。皆さんと価値を共有し、皆さんと一緒に取り組みたいと思っています。この会場に来ているような、素晴らしい開発者の皆さんと。ぜひ協力してください。」(日本の政府の人は、なかなか言えないよね。。。)

Jennifer はかつては NPO で働き、政府ともやりとりしていた後、Tim O'reillyのところで Web2.0 Conference の運営を行い、Tim が Gov2.0 に関心をもつようになったのに感化されて Gov2.0 カンファレンスを運営したり、Gov2.0 についてツイートするようになった。しかし、連邦政府に関する Gov2.0 は進むのに、地方自治体に関する Gov2.0 はなかなか進まない。よくよく考えてみると、連邦政府がやっていることなんて、ほとんどの市民にとっては大きすぎて関係ない。ところが地方自治体がやっていることは、市民の生活に直結するし、結果が見えやすい。ほんとは地方自治体の Open government をやるべきなんじゃないの?と思い立つ。

どう実現するか。連邦政府のような大きなことに取り組みましょうという呼びかけには開発者たちも参加してくれるだろうが、地方自治体の Open Government なんて、誰も手伝ってくれないのでは。

手探りで始めた取り組みが、"Code for America"という、アメリカの都市(地方自治体)の Open Government を進めるためのプロジェクト。最初は何も決まっていなかったにもかかわらず、13都市がぜひやりたいと申し込んできてくれた。開発者側はもっと心配。「仕事を一年間休んで、このプロジェクトにフェローとして没頭してください」なんて依頼を、受ける人がいるのか。シリコンバレーで、自分のアイディアを実現するためにプロダクトを作って、成功していく方が全然儲かる。そういうチャンスを投げ打って政府のつまらないシステムを直すために一年くださいなんて、応募してくれる人なんているのか。。。そう思っていたけれど、たくさんの人が応募してきてくれた。

Code for Americaでは、フィラデルフィアやボストンなどで1年目のプロジェクトが開始。

ギークとスーツの違いは色々なところでありました。例えば、ギークはネクタイなんてもっていない!そこで、6人のフェローの人達は、6本のネクタイを買って、毎日交換して回していたそうです。(ネクタイなんて普段はしないけど、一応周りに気を使ってネクタイはしたのでしょう。そして欲しくもないネクタイをたくさん買うなんて馬鹿馬鹿しいけど、毎日同じネクタイをしているように見えないようにと気を使っているのですね。講演見ていて、ちょっとこのギーク達が愛しくなってしまった!)

彼らは去年、21個のアプリやサービスをリリースしたそうです。

その内の一つは、Discover BPSというサイトで、生徒や親御さんが学校を探せるためのサイト。政府が頼むシステムやさんに頼んだら、2年がかりで200万ドルかかると言われたものを、さくっと作ってしまった。2年後まで、生徒さんや親御さんは待てませんから。

そんな腕利きの開発者達にとって、政府の仕事は楽ではないし、お金も儲かるわけではない。「もっと簡単なプロジェクトも、もっと金儲けができる仕事がいくらでもあるのになぜ Code for Americaをやろうと思ったの?」と聞いたら「政府のシステムは、もっとシンプルで、美しく、使いやすい物であるべきだと思っているから」という回答が返って来た。そうあるべきだけど、そうなってない。だったら、自分が協力して直そう。

政府のシステムは問題だらけで、当然それを直すために助けてくれている人たちはフラストレーションがたまる。だけど、フラストレーションが溜まった時に、文句は言わない。文句を言う代わりに、それを直し、結果を出している (get things done)。(日本でも、文句をいう人はいっぱいいるけど、それを直す人が少ないので、政府のことは政府が直すべきと文句をいうのではなく、直せるといいですね。)

もうひとつのサイトを紹介しておきましょう。それは "Adopt a Hydrant"というサイトで、ボストンの Code for America で作られました。消火栓は重要ですが、雪が降って消火栓が埋まってしまうと、火事になったときに消火栓が機能しない。それを直すにはどうしたらいいかというと、消火栓マップを共有し、「自分がこの消火栓の面倒を見るよ。雪から掘り起こしておくよ!」という市民が、自分が面倒をみる消火栓を登録する。街のみんなで街を守ろうという物。


このサービスを公開し、ソースコードはgithubにアップしておいた。そうしたら、20個の地方自治体がフォークして、別の用途でこれを使い始めた。

ホノルルでは、"Adopt a Siren"と言って、市民がそれぞれ自分の家の近くのサイレンを面倒みると手を上げるためのサービスを始めたそうです。ホノルルで津波のサイレンは重要なのですが、電池がすぐに盗まれてしまうので、津波が起きてもサイレンが鳴らなくなっていたのを、これで市民がみんなで解決できるようにしたそうです。

フィラデルフィアでは嵐が起きるので"Adopt a Stormdrain"、シカゴでは雪が多く降るので"歩行者通路の雪かき"にこのシステムがどんどん発展していく。

システムが一個作られて、それがオープンにされるだけで、そのシステムが各地の独特の「困っていること」に適用され、米国の20ヶ所もの市民たちが、自分の市をよくするために手を上げて動き始めたというのがすごく面白い。共通しているのは、今までだったら「役所が雪かきしてくれなきゃ。税金払ってるんだから!」「消火栓が使えないのを直すのは役所の責任でしょ!」と言っていたところを、市民が、自ら直すという風に手を上げて、みんなでやりはじめたこと。UGCでユーザーが写真とか動画とか作り始めましたとか、crowd fundingとかcrowd sourcing とか「みんなでやる」ことがどんどん増えてきたけれど、役所に任せず、市民が市民のためのサービスを、みんなの力でやる、という動きがでてきたことは素晴らしい。

Jennifer は、"Government is what we do together"「政府って我々市民が何を一緒にやっていくかなんだと思う」と言います。昔はたしかにそうだった。アメリカはイギリスから独立するために戦おう。日本は海外との競争力をもつため、富国強兵しよう。市民が安心して暮らせるように、豊かに暮らせるように、政府は政策を作り、実行していく。いつの頃か、政府がやることと市民が乖離してしまった。アメリカでは、今、それを取り戻そうとする動きがたくさん起きている。また日を改めて色々紹介しようと思います!

話を戻して、Code for America では、ギークが勝手に作りたいものを作るのではなく、中に入って、みんなの底上げをするようなプロジェクトもやっています。フェローのメンバーたちは、市のコールセンターの電話も受けてみたりして、そこで寄せられる市民の相談の声を参考にサービスを作ったりもしている。

あと、市長さんに Google Docs の使い方を教える、Google Docs 講座なんかもやっているそうです。(これだったら私も日本でできるな!)フィラデルフィアでは、市長さんがハッカソンに参加してきたそうですよ。すごい!メイヤー参加ハッカソン :D

今では、Code for America に賛同している都市は16に増え、市民の役に立つアプリが毎日開発されています。

"Coding isn't just about making software. It's about rewiring society." 「
コーディングというのは、ソフトウェアを作ることだけを指すのではない。社会を書き換えることでもあるの」。市民は、政府のサービスを消費する「消費者」という意識を捨てて、もっと市民としての意識を持ち、文句を言うのではなく自ら直しましょう。それが、政府を直すことにつながっていきます。。。とJenniferは語ります。

Code for Americaを助ける方法は、たくさんあります。

#1 役所で働く若者を増やすこと。1970年代は地方自治体の職員は70%が40歳以下だったのに、今は若者がほとんどいない。だから、若者だったらさっさと直すような色々な問題がそのままオジサン達に放置されているそうです。

#2 Code for Americaでは今もフェローを募集中です。申し込みはこちらから。 codeforamerica.org/apply

#3 重要なスタートアップを作り、codeforamerica.org/acceleratorに参加して下さい。なんと言っても政府のシステムは$140 billionの市場ですから、よい会社を作り、ぜひ仕事として請け負って、政府のシステム改善を助けて下さい。

#4 自分が住んでいる市が Code for America に参加するよう、働きかけてください。

#5 米国政府から、open dataがたくさん提供されています。それらをぜひ活用して、よいサービスを作ってください。

#6 brigadeに参加し、自分が住んでいる地方自治体のシステムを改善するサービスやアプリをどんどん開発してください。 brigade.codeforamerica.org

#7 市民らしく、生きてください。

SXSW でスタンディングオベーションってそれほど出ないのですが、彼女の講演の後はスタンディングオベーション起きてました。地方自治体での Gov2.0 の重要性を強く訴えかけた、素晴らしいスピーチでした。

SXSW

もう一本、動画を紹介。Facebook の創業者Mark Zuckerberg、Twitterの共同創業者Biz Stone、Flickrの共同創業者 Caterina Fake、そしてオライリーの創業者 Tim O'Reilly等が Code for America のフェローを募集。


Disclaimerこのブログは山崎富美の個人的なものです。ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。